2022年2月20日日曜日

北京冬季オリンピック閉会式で

 北京冬季オリンピックの閉会式を観ていると、聞き覚えのある曲が流れ、ふと口ずさんでしまった。

「更け行く秋の夜 旅の空の わびしき思いに ひとり悩む・・・」

年配の人なら、学校で学んだことがあるだろう。『旅愁』というタイトルのこの曲、それがなぜ北京オリンピックで流れたのか。

実はこれ、翻訳唱歌であって、原曲はJohn・P・Ordwayによるアメリカの楽曲で、原題は”Dreaming of Home and Mother”という。それを1907年に犬童球渓が訳詞したものだ。

中国でも、1915年ごろに李叔同(弘一法師)という人が中国語で詩を付け、『送別』というタイトルで広く知られている。1983年公開の中国映画『城南旧事』でも劇中歌として採用されて、親しまれているようだ。また、1996年のテレビドラマ『真愛緣是你』(香港)でもエンディング曲として用いられている。

アメリカの原曲や日本の『旅愁』は故郷や父母への郷愁を語っているのに対し、中国の『送別』は別れの寂しさを表現している。それゆえ、閉会式にも採用されたのだろう。

この曲は、日本や中国では愛唱歌として親しまれているが、生みの親であるアメリカではほとんど知る人もないという。作曲者のオードウェイは、アメリカ音楽の父と言われるスティーブン・C・フォスターと同時期に活動した人である。フォスターといえば『草競馬』や『おおスザンナ』などの作曲者で、『旅愁』と似た曲調の歌いやすいメロディが思い出される。いずれも親しみやすい曲である。久しぶりに耳にした『旅愁』を通じて、中国も同じアジアなのだなぁと改めて実感した次第である。

齊豫歌唱送別→ https://www.youtube.com/watch?v=76XjSH1KpBM

中国电影《城南旧事》→ https://www.youtube.com/watch?v=kreF5ywo3SM

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