2009年4月8日水曜日

電動車いすを作ろう その9 ~電動車いすのバッテリについて

ようやく風邪の症状も治まり、少しずつエネルギーが復活してきました。
ご心配いただいた皆様、ありがとうございました。


さて、報告したい事柄はヤマほどあるのですが、今回は、予告のみで止まっていた「簡易電動車椅子」のバッテリについて書いておきたいと思います。

前回3/13の日記(その8)に書きましたように、私が簡易電動車椅子の製作申請にもたついているうちに、市販モデルのバッテリにも新たな仕様のものが加わりました。

従来のバッテリは「ニッケル水素」電池が主流だったのですが、今年の2月からYAMAHA製の電動ユニットに「リチウム・イオン」電池が登場したのです。正確に言うと、以前発売されていた「リチウム・イオン」タイプのものの不具合を克服して再発売したということのようです。この話はマイミクさんから昨年末あたりに情報をいただいていたので、どのような仕様や価格設定になるのか楽しみにしていました。

車椅子メーカーのE社からのメールによると、これまでのニッケル水素電池に比べ、走行距離は倍の30km、充電可能回数は700回と格段に上がっているそうです。

ここで、ちょっと電池のお話。
懐中電灯やラジオ受信機などに使う「乾電池」を専門的には「一次電池」と呼びますが、これは化学反応が終了すると起電力を得られなくなり使用不能となる電池です。

それに対し、双方向に化学反応を起こすことによって起電力を復活させることができるもの、つまり放電と充電を行うことによって繰り返し使用することができる「蓄電池」を「二次電池」と呼びます。

電動車椅子に装備されるようになったリチウム・イオン電池は、正確に言うと「リチウム・イオン二次電池」ということになります。なので、ここでは以下、単に「電池」と書きますが、「二次電池」のことを指しています。

リチウム・イオン電池は、性能的にはニッケル水素電池よりも上位になり、ユーザーとしても扱いやすいので、是非とも「リチウム・イオン」のほうを選びたくなります。

その第一の理由は、蓄電池のメモリ効果です。
「ニッケル・水素」電池や「ニッケル・カドミウム」電池(=ニッカド)などにはメモリ効果というのがあり、これが厄介者なのです。
メモリ効果というのは、これらの蓄電池を完全放電しない状態で充電したときに発生する現象のことです。

これら蓄電池を完全放電前、つまり完全に使い切らないうちに充電すると、充電したときのレベルを蓄電池が記憶してしまい、それ以上深い充電ができなくなってしまうのです。

また放電するとき(=電気を使うとき)にも、記憶したレベルに達するとまだ電気は残っているにもかかわらず放電を停止してしまいます。これでは記憶されたレベルまでしか充電・放電ができなくなってしまうということで、メモリ効果が大きいと蓄電池の容量が減少してしまいます。

言い換えると、蓄電池の電気の残量が半分ほどになったからと言ってそのまま継ぎ足し充電すると、蓄電池自身が「自分の容量は半分しかないのだ」と思い込み、充電しても半分まで電気を使うと、それで空っぽになったと判断して働くのをやめてしまいます。
そして、それを繰り返していると、元々持っている容量の半分しか使えずに、1回充電に対して動くのは本来性能の半分以下・・・。新品の電池なのにどうしてこんなにモチが悪いの~?ということになってしまいます。

ただ、これら「ニッケル水素」や「ニッケル・カドミウム」の蓄電池に発生するメモリ効果は一時的なもので、一度深い放電を行って完全に空っぽにすればメモリ効果は消滅します。ニッケル系の蓄電池の充電器には放電機能(リフレッシュ機能)が付いている物がありますが、これは充電前に一度完全放電を行うためのものなのです。

一方で、リチウム・イオン電池はどうかと言いますと、こちらはメモリ効果がかなり小さいので、継ぎ足し充電をする機器に適しているという利点があります。
携帯電話やノートパソコン、iPodのようなオーディオプレーヤではほとんどがこの蓄電池を使用しています。外出先で電池が切れては困るので、お出かけ前に電気の不足分をちょいと充電、なんていうシーンは普通にありますよね。こういう時こそリチウム・イオン電池の出番なのです。

また、リチウム・イオン電池は自己放電特性(=充電エネルギーの保持特性)がニッケル系の電池より格段に良い、つまり長持ちするという利点があり、この点に於いても魅力的な蓄電池であると言えます。

欠点もいくつかあるのですが、日常生活に於いて気にしなければならないことと言えば、「衝撃に対する保護」と「保存特性(=保存状態での性能保持特性)が劣ること)」あたりかなと思っています。要は、取り扱いと保存状態に注意ということですね。


さて、ここで電動車椅子のバッテリとして適・不適を考えてみますと、私が性能で選ぶとしたら「リチウム・イオン」になるでしょうか。その第一の理由は上に書いたように「メモリ効果」です。

電動車椅子は電気があってこそ便利な道具です。外出先でバッテリ切れでは話になりません。なので、お出かけ前には少しでも満充電状態にしておきたいもの。ニッケル水素電池ならばいちいち完全放電してから充電しなければならず、時間も掛かるし、何より充放電を繰り返すと寿命を縮めることにもなります。

それに対してリチウム・イオン電池ならば、気軽に継ぎ足し充電が可能なので、何の気兼ねも無く常に満充電の状態で外出できるということになります。
それに加えて、1回の充電での走行距離がニッケル水素電池の倍ということだし、寿命も長いとなると魅力的なことこの上なし~。

前置きが長くなりました。
ここまでの話では、文句無くリチウム・イオン電池を選べば良いということになりますが、そうすんなりと事は運ばないのです。

まず、価格がかなり高くなります。
E社に問い合わせたところ、新車注文の際にリチウム・イオン仕様にすると生じる差額はプラス69,000円だそうです。

では、障害福祉の助成のほうはどうかというと、福祉行政は遅れていて、いまだに「ニッケル水素」でしか申請は認められず、リチウム・イオン電池の分は実費自己負担ということになるのだそうです。そうなるとバッテリ部分だけで約10万円は余計に掛かるということになります。これはかなり痛い・・・。
(↑注:この部分、少し誤解がありました。バッテリは電動車椅子には不可欠な部分なので、オーバーした差額だけの負担になります。---2009.11.09追記)

さらに役所の担当者Mさんに確認してみたのですが、申請範囲内で認められている「ニッケル水素」電池にした場合、電池寿命などにより新しい電池が必要となったら「修理対応」で支給することができるが、「リチウム・イオン」電池にした場合は当然、新しい電池も全額自己負担になるということでした。

バッテリ自身は「ニッケル水素」であっても安い物ではないし、また蓄電池の寿命はニッケルであれリチウムであれ意外と短いものなだけに、こうした条件を勘案すると実に悩ましい選択になります。


今まであれこれ悩んできたのですが、現段階では「ニッケル水素」電池のものでいいかなと思い始めております。

その理由としては、
・「リチウム・イオン」バッテリ部分が高価なこと。
・「ニッケル水素」の新しいバッテリ購入時に助成が受けられること。
・もう少し待てば、制度が変わり、「リチウム・イオン」電池も助成対象になるかもしれないこと(←勝手な推測ですが)。
・「リチウム・イオン」の走行距離の長さも魅力的だが、私の使用環境では10kmぐらいでも問題がなさそうなこと。
・いずれ技術が進んで、改良型が次々に登場するかもしれないこと。


これを書きながら気持ちの整理をつけようとしたのですが、書いているうちにまた悩み出してしまいました(笑)。
それ以前の問題として、早くメーカーやモデルの選定をしなければならないというのにね。


さて次回は、先日あらためて受けた速度変更の「判定」について書きたいと思います。

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