現在のところ、英語以外の外国語用電子辞書を国内メーカーで探そうと思ったら、CASIOのエクスワード一択である。それもドイツ語やフランス語ならまだしも、スペイン語やロシア語、韓国語となると選択の余地はほぼゼロに近いのが現状だ。スマホの普及により電子辞書マーケットが縮小していることは容易に理解できるが、事態は思ったより深刻なのだ。
ここで言う外国語用の電子辞書とは、たとえば仏和辞典や日韓辞典、中国語辞典などのいわゆる第二外国語辞書を収録している専用モデルを指す。以前はSHARPやCANONなどからも発売されていたが、今ではモデルの選択に悩む必要はない。それどころか、外国語によっては買いたくても買えない事態が生じている。唯一国内メーカーで頑張っているのがCASIOだが、その現行モデルの電子辞書ラインアップを見て驚く。外国語モデルというのがあり、型番で紹介すると次のようになっている。
XD-SX9810 英語モデル
XD-SX7000 外国語ベースモデル
XD-SX7100 ドイツ語モデル
XD-SX7200 フランス語モデル
XD-SX7300 中国語モデル
来春から大学に進学し、第二外国語でスペイン語を取ろうと思っている学生は唖然とするだろう。数年前まで存在していたスペイン語専用モデルがなくなっているのである。いまや高校で第二外国語としてスペイン語や韓国語、ロシア語のコースを開講しているところもあるというのに、時代を疑ってしまう。繰り返すが、上のラインナップはSXシリーズという現行モデルなのである。
型番のロジックを説明すると、XD-は電子辞書「エクスワード」の意で、SXは発売年、その後ろの4桁の数字は収録するメインコンテンツを示している。CASIOは2020年までほぼ毎年1月ごろに新しいモデルを発売していたので、型番により発売年が特定できる。
SXシリーズ 2020年度モデル
SRシリーズ 2019年度モデル
Zシリーズ 2018年度モデル
Gシリーズ 2017年度モデル
Yシリーズ 2016年度モデル
Kシリーズ 2015年度モデル
Uシリーズ 2014年度モデル
(以下略→Wikipediaに詳しい)
実のところ、CASIOは2020年度モデル(2020年1月9日発売)を最後に英語以外の外国語新モデルを発表していない。学生モデルやプロフェッショナルモデル、ビジネスモデルなどは9810のように10の位を変更して地味に新モデルを出しているようだが、外国語モデルはその気配はないのでこの先ディスコンを心配するが、SXを冠して現行モデルとしている限りはすぐに生産終了ということにはならないだろう。ネット通信機能の追加や本体記憶容量のアップにより、しばらくはそのままでアプリ対応でまかなおうということらしい。
詳しい方はご存じかと思うが、CASIOの外国語電子辞書はSXシリーズになってからラインナップに大きな変更があった。型番の4桁の数字に注目していただきたい。ひとつ前のSRシリーズまでは下記のモデルが存在していたのだ。
7400 イタリア語モデル
7500 スペイン語(/ポルトガル語)モデル
7600 韓国語モデル
7700 ロシア語モデル
これらは各外国語対応の辞書が収録されているのだが、収納コンテンツ以外に何が違うかというと、それぞれの言語に対応した(物理)キーボードが装備されている点だ。イタリア語モデルは英語と同じだが、スペイン語モデルには「エニェ」がプリントされ、韓国語モデルにはハングル文字が、ロシア語モデルにはキリル文字がプリントされている。イタリア語とスペイン語は英語キーボードであるていど代用できるが、韓国語とロシア語はそうは行かない。こうしたキーボードを装備した電子辞書が現行のSXシリーズには存在しないのである。
では現行SXシリーズはどうなっているかと言うと、外国語ベースモデルSX7000を購入して、外国語辞書のアプリをインストールして使ってくださいということらしい。物理キーボードは英語配列のみで、肝心の外国語キーボードはタッチパネル対応となる。これが意外と不便で、打ち込んだ後、キーボードを消さないと検索結果が一覧できないのだ。しかも外国語ベースモデルSX7000の実勢価格は40,000円ぐらいで、さらにそれぞれの言語対応の辞書アプリを追加しなければならない。たとえばスペイン語なら、1パッケージ11,000円のアプリ、さらに『オックスフォードスペイン語辞典』が欲しければ4,400円、そして『スペイン語経済ビジネス用語辞典』は2,200円が必要だ。
そんなわけで、過去モデルがいまだに高値で取引されているのも理解できる。旧型番のモデルはAmazonやメルカリなどで運が良ければ入手可能だが、モデル選びの際に注意することがあるので、英語以外の外国語コンテンツに焦点を当てて自分なりに調べたことを書いておこうと思う。(もちろんドイツ語、フランス語、中国語は現行のSXシリーズで問題はないだろう。)
まず前提として、追加コンテンツアプリの仕様である「DATAPLUS10」対応となったYシリーズ以降、Gシリーズ、Zシリーズ、そして外国語物理キーボード最終装備のSRが選択肢となる。それ以前のモデルでも収録コンテンツに変わりがないなら使いたいという向きもあろうが、やはり新しいほうがキー入力や検索速度が速いので、あまり古いものはお勧めできない。収録コンテンツを比較してみて、改訂新版の辞書が採用されていれば新しいほうを選びたいが、いたずらに最新モデルを追うのも注意が必要なのが外国語モデルの難しいところだ。
言語別に解説しよう。イタリア語(7400)とスペイン語(7500)は最後のモデルであるSRシリーズがよいが、YやG、ZシリーズであればDATAPLUS10対応で、コンテンツにも差がないので考慮してよい。ただし、ポルトガル語はGシリーズ以降からの標準収録になっているので、スペイン語/ポルトガル語モデルを選びたい場合はYシリーズは除外する。Yシリーズ以前のモデルにポルトガル語アプリを追加することはできるが、追加コンテンツ(CD-ROM版)はDATAPLUS4以降の対応になっているので、現実的には2012年度以降のモデル(D、N、U、K、Y)となろう。追加コンテンツアプリは11,000円だ。
韓国語モデルは収録コンテンツに変更がないので、Yシリーズ以降、G、Z、SRのうちから選ぶことができる。収録されている辞書のメインはいずれも小学館の『朝鮮語辞典』だが、これは2018年に小学館『韓日辞典』として25年ぶりに一新された版が出た。残念ながら、この新版辞典を収録したモデルはないのだが、追加コンテンツとして現在こちらが収録されたものが発売されている。ただ、惜しいことにこのアプリはSRシリーズ以降のみの対応なので、ハングル文字キーボードで使おうと思うとSRシリーズ一択になる。初学者には『朝鮮語辞典』でも十分だと思われるので、ときどき中古市場に妥当な価格で出品されるZ7600が狙い目か。
↓XD-Z7600(Amazonより)
ロシア語モデルは収録コンテンツに注意が必要だ。SRシリーズになって、なぜか『オジェゴフ露露辞典』が外されているのだ。あるていど学習が進んでくると露露辞典は重宝するはずなので、これは外せないとすると、Y、G、Zシリーズが選択肢となろう。できれば一番新しいZ7700を選びたい。なお、露露辞典は追加コンテンツでも販売されていないので、SRシリーズに追加インストールすることもできない。
↓XD-Z7700(Amazonより)
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