2008年10月30日木曜日

電動車いすを作ろう その1 ~補装具費の申請

「きもの文化検定」の興奮いまだ冷めやらぬ日々ですが、今日は久しぶりに障害者福祉の話題を書きます。

話は少しさかのぼって、今年8月のこと。
日記にも少し書きましたが、8月初旬に家族で北海道旅行に行きました。自家用車に手動自走式の車椅子を積み込んで、フェリーで苫小牧に入り、そこから北海道の西側を10日間ほどかけて回ってきました。旅行記を書こう書こうと思いながら早くも3ヶ月が経とうとしておりますが、期待しておられた方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。
それはさておき、向こうではいたるところで車椅子のお世話になりました。特に、旭川市の旭山動物園や、小樽の市内散策では車椅子が重宝しました。
まぁ、私はほとんど押してもらうだけだったのですが、大変だったのは介助者たる家族です。私は少し大柄なほうなので車椅子を押すほうも並みの力では賄えません。
小樽はまだしも、旭山動物園では坂も多く、手動車椅子ではかなりシビアな環境でした。帰りがけにゲート脇をふと見ると、電動機能のある車椅子が置いてあり、「ああ、なるほど」と思いました。最初からそれを借りていればもう少しラクできたかもしれないわけで・・・。

車椅子は押すほうはもちろん大変なのですが、押してもらうほうも大変なのです。
ぐるぐる方向転換されると眩暈がするし、上り坂や下り坂では怖い思いをする。介助者からは前の足元が見にくいせいもあり、人ごみでは歩行者のかかとにぶつけることもある。ぶつけなくとも、ぶつかりそうになるだけでこちらは恐縮至極。そして何より心苦しいのは介助者が懸命に押してくれていることへの気兼ね。
それがたとえ家族であっても「無理しないでね~」と言いたくなります。

私は怪我による頚髄損傷です。足だけでなく腕や手先にも麻痺があるので、自走式車椅子であっても自分で漕ぐには限界があり、車椅子を使うにしてもほとんど押してもらうことになります。なので、一人で外出するにも制限があり、慣れた場所や勝手が分かる場所ならまだしも、それ以外の行きたいところへはなかなか一人で行く勇気がありません。

それで、ふと思い立ったのが、「電動車椅子を作ろう~」というわけなのです。
電動車椅子というのは、手元のスイッチをちょいと操作するだけで、電気の力で車椅子を前後左右に操作できるというものです。
他に、電動アシスト型というものもあって、そちらは自転車にも採用されているようにわずかな力で車輪を漕ぐことができるというものです。
電動アシスト型のほうが自分の意思を伝えやすいような気がするのですが、指先にも麻痺がある私はリムをうまくグリップすることができないので、恐らくまっすぐ進ませることができません。それで、どうせ作るなら電動の車椅子をと思い立ちました。
電動なら力も要らず、小手先一つでスイスイ。しかも自分で操作するわけですから、気兼ねなく動けます。

電動の車椅子にもいくつか種類があります。
車輪が小さく、大きなバッテリがどんと積まれていて、一目で電動だと分かるような本格的なものが一つ。
そして、簡易電動型と呼ばれている、一見すると普通の自走式車椅子の形をしていて、それに電動ユニットが組み込まれているものなどがあります。後者はレバーの切り替えにより手動にもなるので、役所などでは手動兼用型切替式電動車椅子などと呼んでいるようです。
私は主に自家用車で移動して、出先で車椅子を使うという行動パターンが多いので、車椅子を自家用車に積載する必要があります。私の車はいわゆる福祉車両ではないので、車椅子は折りたたんで載せなければなりません。前者の本格的な電動車椅子は折りたたむ余地はありませんが、幸いにも後者の簡易電動型の場合は、普通の車椅子のように折りたたむことが可能です。
私は迷わずこの簡易電動型を選ぶことにしました。

電動車椅子を作ろう~と言っても、その値段は気軽に買えるものではありません。
メーカーも色々とあって、そのスペックや装備によって値段はピンきりですが、安いものでも40~50万円ぐらいします。
さぁ、ここで苦しいときのお役所頼み。

ちょうど8月は某手当の現況確認届けをしなければならない月なので役所に出向き、そのついでに障害福祉課に立ち寄って聞いてみることにしました。ただでさえ役所を相手にするのは緊張するものですが、今回は給付や助成などに関する交渉です。経験上これはなかなか大変な仕事です。
例によって、手元にある資料やインターネット・サイトなどで情報収集し、事前にがっちり武装して出かけました。

私が考えたのは、「補装具費の支給」という名目で電動車椅子作成のための費用を一部支給してもらおうということでした。地元自治体が発行している「障害者福祉」に関する分厚い小冊子をつぶさに読み進めていくと、私の条件で電動車椅子作成の費用を公費負担してもらえそうなことが分かりました。ただし、基準価格の見積金額の範囲内で1割の自己負担がありますが、本体が高いものだけに非常に助かります。

役所と話をするときは、曖昧な知識を振り回すだけではダメだと言うことを経験上知っていますので、制度の名前や用語なども正確に覚えていく必要があります。こちらが高飛車な態度をとってはいけませんが、正確な用語を使うだけで職員の対応も変わりますし、何より話が早くなります。
今回も、電動車椅子を公費の一部助成を得て作りたいこと。その際、補装具費の支給という制度を利用したいこと。それは「障害者福祉」についての小冊子で見てきたこと。なぜ電動が欲しいと思うようになったかということや、私の現在の生活環境や条件が支給に適合していると思えることなどを整然と話しました。

すると話はあっさりと受け付けていただき、資料一式をもらうことができました。対応してくれた職員は若い女性で、非常に分かりやすく話をしていただける有能な方でした。
本件は、正確には「障害者自立支援法」に基づく支給になるとのこと。

ただ、やはりこれほど高額なものをいただくのは簡単ではなく、上級庁(都道府県レベル)管轄の障害者福祉センターにおいて判定を受けなければならないということでした。
指定された日にセンターに出向いて、医師や理学療法士などの診察を受け、正しい操作ができるかどうか、実際に電動車椅子に乗って路上を走っての適正検査を受ける必要があるとのこと。
診察はとにかく、今まで電動車椅子にはほとんど乗ったことがない私は、実際に乗っているところを見せると聞いてビビりました。まるで、自動車教習所の卒業検定のような印象を持ちました。
で、そのことを正直に職員に話したら、「業者さんで貸してくれるところもあるので、それで練習しておいたほうがいいですよ」とアドバイスをくれました。

「何度も役所に足を運ぶことは大変なので、今ここでできるだけの手続きをしておきたい」と話し、申請書類一式に記入、押印して提出しました。
心身障害者福祉センターでの判定については日時が決まっているというので、その場でセンターに電話していただき、8月の実施日時をすべて教えてもらって持ち帰りました。電動車椅子貸し出しの手配があるので、その状況を見ながら、後日電話で希望日時を伝えることにし、その日はそれで帰ってきました。

というわけで、以下、続きます~。

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