2008年10月28日火曜日

【きもの文化検定】 2級問題レビュー(後編)

=【きもの文化検定】2級試験問題レビュー(後編)=

レビュー後半です。
最後に<2級受験の対策>など総括も入れました。

<文言記述問題その1>・・・空欄に適当な言葉を入れて、文章を完成させる問題。
(漢字または平仮名で答えること。)
設問数:10、 解答欄:32

問17 (京友禅)・・・解答欄:3
*京友禅の歴史と製造工程の特徴についての設問。
「江戸(元禄)」時代に、京都の扇面絵師であった「宮崎友禅斎」が創案したもので、「糸目糊(友禅糊)」を使うことにより多彩な後染め模様を描くことが可能になったという友禅の基本を問う問題でした。



問18 (江戸小紋)・・・解答欄:3
*江戸小紋の歴史と製造工程および特長についての設問。
武士の「裃」に起源を持ち、「しごき」という技法で地色を染めること、およびその型紙の名称が「伊勢型」と呼ばれることを知っていればOK。
伊勢型という名称はその産地にちなんで命名されているものですが、過去の問題で出題されています。
それと、「裃」や「しごき」については、公式サイトに載っている2級模擬試験問題にほぼ同じものが出ていますね。



問19 (本場大島紬)・・・解答欄:3
*本場大島紬の産地および製造工程についての設問。
本場大島紬は、奄美大島、鹿児島市周辺および宮崎県都城市周辺が産地とされていますが、私は意外性を求めて都城市にヤマを張っていました。設問は基本的なもので、「奄美大島」を書かせるものでしたね。

工程上で重要な用語である「絣筵(かすりむしろ)」が問われていますが、これは失念されていた方が多かったかもしれません。私は昔、奄美大島の大島紬の工房見学をしたこともあり、大島紬は馴染みの織物だったことが幸いしました。

設問の最後では、代表的な泥大島の製造工程で使われる煮汁の原料を問うものがありましたが、すぐに浮かぶのが「テーチ木」・・・。でも、「漢字か平仮名で書け」という指示で悩んで、別称の「車輪梅」としました。どちらでも正解です。



問20 (西陣織)・・・解答欄:4
*西陣織の歴史と製造工程についての設問。
西陣という名称の由来が室町時代の「応仁の乱」であることと、明治期にヨーロッパから「ジャカード」機という紋織り機を導入して技術革新を図ったという、基本的な部分を問われました。
実はいずれのポイントも過去の問題で出題されていたように記憶します。きもの検定試験でも、過去問を洗っておくことは重要のようですね。
私は、すぐに「ジャカード」が閃いたのですが、やはりここでも「漢字か平仮名で答えよ」という指示にぶち当たり、カタカナで書くことに抵抗がありました。国家試験などでは問題の指示は絶対的なので、うっかりカタカナで書くと失点してしまいます。それで、仕方なく「紋織機」と書きました。

このあと問22で英文字を含む解答が出てくるのですが。そのとき意を決して、試験中にも関わらず試験監督の方に、
「解答にカタカナで書くことを想定されるものが出てくるのだが、指示は漢字または平仮名。どうすればいいですか?」と確認してみました。
私は当然、責任者なりに確認してもらえるものと思ったのですが、「問題についての質問は受け付けられません」と門前払い。
しかし、どうしても「ジャカード」と書きたかったので、結局は平仮名で「じゃかーど」と書き換えておきました(笑)。

先の日記にも書きましたが、この件でちょっと腹が立つのは、ほかの試験会場では「カタカナや数字が混じっても良い」との説明があったという証言がコミュに出ていたことです。
最初からそう言ってくれればもっと話は早かったし、もしかしたらそのせいで他の言葉を書いて失点してしまった人もいるかもしれない。
そう思うとお気の毒です。

この件は、とりあえず検定事務センターを通じて主催者に連絡していただいております。

さて、西陣織の工程についてですが、図案を方眼紙に拡大して作成する「紋意匠図」、およびそれを機に伝達する「紋紙」という用語が出てくればOKなのですが・・・。



問21 (小千谷縮)・・・解答欄:4
*小千谷縮の特徴と製造工程についての設問。
問17のからの文言記述問題では、5問、染織品に関する設問が続きました。そのうち3問が公式教本の第1章に掲載されている代表的な染織品でした。
この第1章を大事に読み込んでいた方は得点できたと思われます。

さて、小千谷縮の縮の原理について説明できるかどうかが分かれ目でした。「緯糸(よこいと)」に強い「撚り」をかけて糊で固定してから織り上げたものをぬるま湯で「湯もみ」すると縮が現れるということですね。製造工程の用語である「湯もみ」という言葉が出てくるかどうかがポイントです。
染織品の製造工程の用語名称は今後勉強する際のポイントですね。
最後に小千谷縮の最大の特徴とも言える「雪晒し」も問われていました。



問22 (縮緬)・・・解答欄:3
*白生地の代表である縮緬の種類と構造に関する設問。
縮緬の基本構造は「緯糸」を撚るということ。
そして、その撚りには右撚りであるS撚りと左撚りである「Z撚り」が交互に入れられるということがポイントです。
「Z」って英文字なのですが、「ぜっと撚り」と書くのも不自然なので、ここは素直に「Z撚り」と書きました(笑)。

右撚り・左撚りの強撚糸を1本ずつ交互に入れる縮緬は一越縮緬と呼ばれ、2本ずつ交互に入れるのが二越縮緬。
問題では「古代縮緬」の別称が二越縮緬だと分かればOKでしたが、古代縮緬は知っていても二越と聞くとピンとこなかった方もいらっしゃったかもしれません。キーワードは2本ずつというところでしょうか。
実は、このあたりも去年の3級問題で出題され、問題文の不備により全員正解となったことは記憶に新しいところです。



問23 (京袋帯)・・・解答欄:3
*京袋帯の特徴などについての設問。
京袋帯については、公式教本2のP162に載っていますが、扱いが欄外補足的なポジションだったので、うっかり見逃していた方もいらっしゃるかもしれません。
普段、和服に接していらっしゃる方には常識として知っておられるかもしれませんが、私のようにほとんど資料でしか勉強していない者にとってはこうした変化球的な質問はちょっとドキッとします。

きもの文化検定試験2級の傾向として、教本内の設問については、教本に記載されている文章がほぼそのまま出ているような印象です。
それに加えて、3級試験での経験から、こうした欄外補足的なものや写真のキャプションに載っているようなものも突付かれていましたので、私はそのあたりも対策していました。来年受験される方は要注意です。

さて、ここで問われたのは教本の内容の通り。
京袋帯が「袋帯」と「なごや帯」の長所を取り入れたものであり、形状は袋帯、長さはなごや帯であることを知っていればOKでした。
長さがなごや帯と同じということは帯結びも「一重」太鼓結びになるな~と閃けばしめたもの。



問24 (藍染の染色方法)・・・解答欄:3
*藍染の工程に関する設問。
藍染めは青色系に染める染色方法の基本なので、ぜひとも覚えておかなければならない項目です。
藍染めには、「生葉染」と「発酵建て」の2種類があることがまず必修項目。
そして、この設問では発酵建てについての工程で出てくる用語「すくも」と「藍の花」を書かせています。
両方とも知らなければ書けない用語でした。教本をしっかり読んでおられた方にとってはバッチリでしたか。



問25 (きものの歴史)・・・解答欄:3
*小袖の起源を問う設問。
小袖という着物が歴史上どのように変遷してきたか、またなぜ小袖という名称なのかを大づかみしていれば解答可能だったのでは?
私は、きもの文化検定の公式サイトに出ていた「模擬試験」で、同じような問題に遭遇したとき、うまく答えられなくて焦った覚えがあります。
「袖口」の形状により、「大袖(or広袖)」と「小袖」に分けられることを理解していればOKでした。
さらには、おはしょりが明治中期に現れたことを押さえていれば、3つめもできましたね!



問26 (悉皆)・・・解答欄:3
*きものの洗い方に関する設問。
着物の裁ち方についての知識を問う問題がさりげなく入っています。1枚の反物を「8枚」に裁断するということが分かればOKだったんですけどね。
この8枚という数字を問う問題は、去年の3級の試験問題にも出題されました。
ここで一瞬、私が悩んだのは例の「漢字か平仮名で」です。仕方ないので、「八」と漢数字にしておきました(笑)。

さて、着物の洗い方については、私が日記でやってた試験対策講座でまとめていたのでラッキーでしたが、あのときなまじ「生洗い」というものも調べだしていたせいで、全体をほどいて洗うのは「生洗い」とすべきかな~と悩んでしまいました。
まぁ、ここはセオリー通り(?)、ほどいて洗うのは「洗い張り」、そしてそのまま洗うのは「丸洗い」とすべきですよね。
揮発溶剤を使って、そのまま洗えば「丸洗い」、ほどいて洗えば「生洗い」らしいので、専門家の方など詳しく知っている場合は迷ったでしょう。
設問では水で洗うという表現などないので、おそらくは「生洗い」でも正解になると思われます。
なお、「生洗い」は教本外の知識になります。




<文言記述問題その2>・・・指示に従って、用語・名称などを書かせる問題。
設問数:4、 解答欄:13


問27 (重要無形文化財)・・・解答欄:4
*沖縄県の先染織物のうち、国の重要無形文化財に指定されているものを4つ問う設問。
重要無形文化財についてはマークしていました。
教本に出ているもののうち、前夜になって、指定年代順までチェック完了していました。
なのでバッチリ~のはずだったのですが、沖縄の織物で4つ~?
教本に載っている3つはすぐに出たのですが、4つもあったかな??とすごく悩みました。
答えは、「喜如嘉の芭蕉布」(または単に「芭蕉布」)、久米島紬、宮古上布。ここまでが教本内です。
他には、「読谷山花織」、「首里の織物」のどちらかを書けばOKとなります。

先の日記にも書きましたが、試験前日に某ブログを通じて、文化庁の「国指定文化財データベース」のURLを入手していたのですが、それを見ると全部載っていました。一度でも覗いていればと悔やまれます。

4つめについて、一瞬「紅型」を思いついたのですが、問題文には「先染の織物」とあるので却下。琉球紅型は白生地に後から染める「後染め」ですからね。
教本に紹介されていた沖縄の織物を全部思い出そうとしたのですが、どの織物にも重要無形文化財とは書いていなかったよな~とメチャ悩んでました。
空欄にしておくわけにもいかないので、琉球絣と八重山上布で悩んで、海晒しという画期的な工程がある八重山上布~!
と意気込んで書きましたが、見事にはずれ・・・。
3つ書かせるのではなくて、4つあげよと問うてきたあたりに、出題者の意地みたいなものを感じました(笑)。



問28 (生糸)・・・解答欄:2
*生糸の断面構造と精練についての設問。
生糸の断面を示した顕微鏡の拡大写真が提示されていて、フィブロインが示されています。つまり、「セリシン」を答えさせる問題。
フィブロインを問う問題は去年の3級試験にありましたね。

さらにこの設問では、セリシンを取り除く工程は何かを問うています。答えは「精練」なのですが、私はこれに関してはその溶液を問う問題が出るのではないかと思っていました。炭酸ソーダやマルセル石鹸などの用語も覚えていたのですが、設問では、石鹸やアルカリ溶液と軽く書かれていて肩透かしでした。



問29 (日本の伝統色)・・・解答欄:4
*日本の伝統色についての説明に対し、該当する色名を書かせる設問。
色を文章で表現するというのは難しいなぁと思いつつ、問題文をよく読むとキーポイントとなる言葉が見つかり、そこからすぐに導き出せます。
ただ、日本の伝統色は複雑な色名を持っており、その歴史的背景も奥が深いので、ここはやはり教本をどれだけしっかり押さえているかに掛かっているかもしれません。

まず、一問目の答えは「納戸色」。キーワードは、<青色>ということと、そのあとの<錆○○、藤○○、桔梗○○(原文ママ)>でしょうか。
公式教本2の文章から抜粋されています。

2番目は「香色」。これも公式教本2からの抜粋です。<茶色>ということと、<丁子などの香木>や<香り高い>という表現がヒントになるでしょうか。

3番目は「鶸色(ひわ色)」。<ある鳥の羽の色に似ていることから>というヒントがありますが、私はこれで鶸色か鶯(うぐいす)色かで一瞬迷ってしまいました。
決め手は、<黄色の勝った萌黄色>であり、<黄緑色の羽>ということで、公式教本1で見たうぐいす色は意外と汚い暗い色だなぁと思った印象があり、鶸色に決定しました。鶸色は公式教本1からの出題です。

最後の4番目は、なぜか瞬時に閃いてしまいました。まず<江戸時代の流行色>ということで、茶色と鼠色あたりがピンと来たのですが、その後に続く説明文中で<抹茶のような>という表現に千利休を思い出したのです。利休の名が付く色名には、<利休茶>と<利休鼠>があるのですが、最後に、<鼠色>と書いてあったので答えは「利休鼠」。

色については、うちの娘に何度も記憶力チェック(?)されていました。
私が度忘れしたときの娘の突込みが絶妙で、たとえば「食べ物の名前が入っている」とか、「幽霊が出てくる木の名前」だとか、「汚い色」だとか、「難しい漢字」だとか言ってくれたのが定着させる良いきっかけとなりました。
それと私が最後まで苦手としていた「襲色目(かさねのいろめ)」がまったく出なかったのは残念でもあり、嬉しくもありです。



問30 (羽織の部分名称)・・・解答欄:3
*男性の羽織の部分名称を書かせる問題。
着物や羽織、帯などの部分名称には日常では遭遇しない特異なものが多いので覚えるしかありません。
そして、このあたりが一番問題を作りやすい項目でもあるので、記述問題ということで受験者の皆さまもしっかり準備されていたのではないでしょうか。
ここで問われたのは「乳下がり」、「まち」、「前下がり」でした。大丈夫でしたか?
私はどうしたことか、「前下がり」が度忘れしてしまい、しばらく苦しんでいました。「前の裾が下がっているから・・・あ、前下がり」。
よかったです。



=====
というわけで、以上、30問です。
3級を受けられた方に特に感想をお聞きしてみたいと思いますが、いかがでしょうか。


<今後の受験対策など>
レビュー内にも少しずつ書いておりますが、やはり公式教本を読み込むことが大切だと思います。教本内の文章がほぼそのまま出題されているような印象でした。

また、その際、欄外や写真についているキャプション(説明文)もしっかり目を通しておきましょう。
工程や歴史的なイベント、用語なども正確にチェックしておくべきです。特に和服独自の用語については知らないと一般常識ではカバーできません。

今回は人名については宮崎友禅斎しか出ていなかったのが意外ですが、このあたりも問題にしやすいので覚えておいて損はないと思われます。

さらに言うと、過去の問題からもいくつか繰り返し出題されている項目があるようです。2級受験であっても、過去の3級はもちろんのこと、5-4級の問題もチェックするほうがよいでしょう。

最後に、教本外の出題がどうしても気になりますよね。
当初、教本からの出題が70%以上と予告されていたのですが、ふたを開けてみると教本外からの出題が10%ほどでしたね。うち、例の皇太子&雅子様の問題が5%で、あとの5%は国語の問題と沖縄の4つめ。これぐらいならあまり神経質になることもないかなと思いました。


ところで、2級は、昨年3級に合格していないと受験できないようになっていますが、ここも併願可能にすべきだと思います。
今回、この程度の問題だと、3級をしっかり準備していた人なら2級も簡単に合格していたのではないかと思いました。

私は去年3級に向けて勉強していたのですが、今年2級受験を決めて、久しぶりにテキストを開いてみたら、忘れていること忘れていること~。ほとんどイチからのやり直しに近い状態でした。

まぁ、毎年繰り返しの上塗り勉強をしていると、知識の定着が良くなりますし、その知識を利用しての見識も深まっていきます。なので、定期的に同じような勉強を繰り返しながら、同時に脱線もしつつ知識を深めていくというのはとてもいいことだなと思えました。
もし、きもの文化検定の主催者もそこまで狙っているとしたら、ほとほと恐れ入りましたと恐縮至極です。

1級がどんな試験になるか分かりませんが、このまま2級ホールダーというのも中途半端な気がしますので、とりあえずは意識しておきたいと思っています。

ただ、足元をみて、検定料をバカ高いものにして欲しくはないですが・・・。

では、お疲れさまでした~!

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